【新規就農と田舎暮らし】寂しいお話

なんとも言えない

麦の播種が始まりました

麦はトラクターで畝立てと同時に播種するので体力は使いません

ですので農事組合の長老が張り切って運転しています

 

私の仕事は種と肥料の追加と溝切りです

不平等ですが爺様にも仕事があるのはいい事ですし張り切ってやるなら尚更です

 

トラクターに播種機をつけるので後がかなり長くなります

これがまた厄介で土手が高いとUターンするときに後を引っ掛けてしまいます

私の地域は山間部でいびつな田が多くお世辞にも恵まれた圃場ではないので危険が一杯です

 

そもそも危険を犯してまでギリギリに寄せる必要はありません

麦の畝が1本減ったところで大差ありませんし寄せる為の手間や燃料を考えると尚更です

ですが牛で引っ張ってた時代の人は少しでも多くの米を作るためにギリギリまで植えていたのでその感覚が残っています

そして厄介なのが頑固なことです

Uターンの度に土手をえぐるので何度もそんなに寄せなくていいと言いますが全く聞き入れません(コラ!)

 

しかしコレが私自身の危機感の無さでしょう 

現場でよく言われる「ハインリッヒの法則」

1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在する

まさにこの通りで土手をえぐったり電柵に引っ掛けてるうちは良かったのですが・・

最悪なことに人に当ててしまいました

畝や溝の補修をしていた他の爺さんに当てたのです

幸い足をかすっただけですがトラクターのUターンは高速ですしロータリーは回っていますから下手すると大怪我、最悪死んでいてもおかしくありません

もちろんトラクターの回転半径にいた爺様も悪いのですがえさすがにこれは流す訳にはいきません

 

爺様達で急遽話し合いがありもう運転手をやめてもらうという結論に至りました

 

いつも頑固で他人の言うことは1mmも耳を貸さない爺様も皆の決定にはさすがに逆らえないようで「そうか・・・ほんなら交代しようかのう」といってトラクターを降りました

 

たった10分で決まった事ですがこれは当日の作業がなくなったというものではなく当人にとっては大きな事です

80歳の爺様には肥料を運んだりクワで溝を掘る体力はありません

トラクターを降りたものの他の作業ができない爺様は何かしら役に立とうとあっちへウロウロこっちへウロウロ

思い立って肥料袋を運ぼうとするもののひっくり返して余計に迷惑を掛ける始末

出来る事がないとなると実質的に爺様は農事組合ひいては農業を引退するということとも言えます

80歳まで農業一筋でやってきた爺様にとってこれはかなり寂しい事じゃかろうか

 

 

農業に若い世代をとはよく言われる事ですが現状は70歳以上の爺様達なくして成り立ちません

肥料袋は20kgが基本ですし新しい農機でも給油口が高い場所にあったりもう少し年寄り向けの改良が必要じゃなかろうか

別に最新技術で対応してほしいというのではなく足場一個つけるだけでも違います

実際自分で改造してる人も多いのですから

 

もっとも不思議なのがドローン向けの肥料

積載能力に限界があるドローン向けに少量で効く肥料や農薬が発売されるようになりました

でもそれならドローンより前に年寄り向けに普及させることは出来なかったんだろうか

もちろんドローンの散布方法だからこそできる部分もあるでしょうしコストや効き目の差もあるのでしょう

 

翌日

安全管理のためのルールづくりと限られた圃場で作業するという形で結局現場に戻りました

別に哀れんでという訳ではありません

やはりその爺様はまだ必要とされているのです

 

 

 

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